Wさまのピアノをお預かりさせていただいてから10日ほど。
ようやく、修理の準備をはじめました。
今回の修理は全弦張替がメインとなります。
弦に錆びが大分でてきています。音も細くなってきているので、フレームも上げ弦圧調整などを行い、新しい弦に張り替える事により豊かな音色を引き出したいと思います。
フレームの裏側です。錆びを落とし、ベアリング研磨やさび止め処理
剥離剤を使用して響板の古いニスを落とし、サンディングや塗装を繰り返し行っている途中です。
フレーム塗装時に、忘れずにネジも一緒に塗装。色が違ってしまってはおかしいですからね。
駒ピンも錆が出ておりましたので、新しくしました。オリジナルよりワンサイズ大きいものです。長さも長くなったので、高さが揃うように慎重に穴を開け打ち込んでいきます。抜くのは響板塗装前に行いました。
響板がキレイに仕上がり、駒ピンも新しいものが入り見た目にもキレイで気持ちがいいです♪
フレームを入れる前にアグラフをいれました。
アグラフ合わせは、一つずつちょうど良いものを探すのに時間も掛かり大変な作業です。
いよいよフレームを戻しました。このフレームがと〜っても重いのです。
フレームを戻した後は、アグラフの角度合わせ。重要な事なので、きっちり丁寧に合わせていきます。
フレームにチューニングピンブッシュ(ピンブロック)を入れ穴あけをします
ただ今、駒圧をみながら、アリコート部や、フレーム貼りクロスの厚みなど、加工をしながら張弦に入るための準備中です。
が、その前にダンパーガイドレールの穴にテフロン加工と、コテ当てしました。穴の堅さにバラツキがありました。
緩すぎても駄目ですので慎重に。
お時間はたっぷりいただいているので、じっくり丁寧にすすめています。
ピアノの低音は、弦を長くするか、軟銅を巻いて重さを与える事で低い音が出ます。
今回もヒロエピアノハウスさんのレスロー弦(芯線部)+デーゲン(巻部)のドイツ製コンビの弦を使用しました。
弦を張った後が実は大変な作業があるのです。絵的には地味ですが・・・
チューニングピンの打ち込み&高さ揃え
以前は大きなハンマーを使っていましたが、前回からはエアー工具のチューニングピンストライカーを導入し、かなり負担は減りましたが、爆音注意ですのでイヤーマフが必要です。
ざっと、引き上げ工具&チューニングハンマーで引き上げます。
その後、今回あらたに導入した、こきあげインパクト工具を使いました
とっても使い勝手が良かったです!持ち替えなくてもこれ一つで、引き上げ&打ち下ろしもできました。
張弦が終了し、これからペダルやダンパー関係、磨きなどを行いながら、何度か音上げをして落ち着かせていきます。
新しい弦は伸びやすくて狂いが出やすいのです。
古いフェルトを剥がし、ダンパーヘッドやワイヤーを磨きます。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、左2つが磨いたもの。
ペダルを取り付けた後は、磨いた後なので保護テープを貼り、ダンパーの掛かりだし調整を行い、ダンパーが一斉に上がり一斉に下がるようにします。
足が短いのでアシストペダルを使います(笑) 細かい作業も可能に。
左○
右×
ワイヤーを曲げて微調整を行います。根気が必要な作業です。
ただいま、アクションの最終調整で仕上げに取りかかっています。
総弦張替と、それに関わる修理を終え、調律を繰り返し音を落ち着かせました。
それと同時に、アクションの調整も行います。
鍵盤のバランス・フロントピンを磨いたあと、鍵盤の調整です。
↑高さを揃える為のペーパーは、鍵盤の動きの支点になる部分の下に入れたり抜いたりして調整します。
↑鍵盤の深さ(約10mm)は大きなペーパーを鍵盤の手前側の下に入れたり抜いたりして揃えます。
そのほか、写真に撮っておりませんが、整調と呼ばれる、アクションの調整を行いタッチを基準に揃え、ハンマー整形や整音作業も行っております。
譜面台は楽譜を置く場所で擦り傷によりくすんでいましたので、バフ掛けしキレイに。
譜面台の楽譜の下が当たる部分のクロスはすり減って穴が空いていましたので、新しいクロスに貼り替えました。
あとは、いよいよ明日、Wさま宅へお戻しして最終仕上げです。
工房での仕上げ調整も終わり、昨日Wさま宅へお戻ししました。
予定より長くお預かりしてしまいましたが、その間の貸し出しピアノの音も気に入ってらした様で、いつでも大丈夫ですとのお言葉に甘えじっくり修理させていただきました。
お客さまにお弾きいただき完了です。
とても喜んでいただけ、こちらも嬉しくなりました。